フうれしさがあるので、絵をかいていてもはり合いがある。もうこの手紙の返事は、かいてくれてもフランスへ到着する迄に僕がマルセーユを立つ頃になるかもしれないね。
 又写真を焼き付けたから送る。カニューの村の近くだ。海岸にはそれは美しい五色の魚船が並んでいる。キレイだよ。トレジョリーだね。
 僕のいるカニュー村は、もう、アルプス県に属している処だ。

 一月十日
 此の頃はこの田舎にも中々落付いていられる様になった。のどかに暮している。初の頃は夕方になると、丁度、垂水に居った時の如く、巴里行きの急行などが走って行くと、すぐ巴里へ帰りたくなって困った。そして、すぐ日本を思い出したりしてな。ここは遠くにアンチーブと云う処の廻旋灯台が見える。その光りを見ても、すぐ淋しくなってしまったのだが、もう馴れてしまった。朝から十五号で Hotel Colonies を近くからかいている。面白く行きそうだ。午後は Cagnes のシャトーをかいている。
 もう、四枚絵をかいたよ。日中はこれで絵をかいているので時間を忘れるが、五時に日がくれて、七時にめしだが、この二時間あまりが、全くタイクツでやり切れないのだ。
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