らないもんだよ。帰りには、ずい分珍らしいおみやげがあるから、そのつもりで楽しんでいてくれ。
 Portsaid を出てから船はすぐ地中海に入ったが、風は涼しく、夜月はよし、波は静かで、琵琶湖で月見をしている様だ。気候はもう初秋の頃である、もうゆかた一枚では寒い、あい服を着て丁度よい位だ。ヒルはそれでも少し暑い時もあるが、何んと云っても九月だから、丁度日本のおひがんの様な心ちがする。
 ソヨソヨと風が吹いて、ポカポカと日が照って、甲板で作業をしているセーラーの姿を見ても、実にのどかである。地中海の水の美くしさは格別だ、碧い色は、見なくてはわからない美くしさだね。
 永い永い航海も、実にへど一つ吐かず健康のうちに、もうあと三日で終りを告げようとしている。
 日本ではカナリに心配をしていた熱帯の旅行も、思った程の苦痛ではなかった。ただタイクツだけが一番の苦しみだった。然し、林君や、硲君や、その他の連中が多かったので大変楽だった。

 九月十六日
 永い永い航海もあす一日で終を告げる事になった。
 クライストにも四十幾日間ものっていると、もう、自分の家の様な思いがして、別れるのが少し気の毒な様
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