者どもの眼が鋭くなって来ました。もうどんよりとした節穴かガラス玉の如きものは少なくなってまいりました。
先日もある浮世絵の書物で美人の標本として二、三の婦人裸像が描かれてあるのを見ました。そしてそれには、相当丁寧に人体各部の説明が施されてありました。さてその足を見ますと、その長さは胴体の長さよりもよほど短く描かれ、足の関節のところで曲がってくの字を横に二つ並べてありました。さてこの足に衣服を着せますと、いわゆる風流柳腰の姿態というものになります。昔の男達はこの腰に迷ったものでありました。私も新内や浄瑠璃時代に片足をふみ込んで生まれたがためにこの腰つきの妙所を少しく理解致します。
しかしながらこの足は厚い裾に包んであり、常に裾の厚さとともに観賞すべきものでありました。その裾から少量の素足を見せるところに悩ましき美は存在したのでしたが、もう火事と地震の現代女性は尻をからげて走り出しました。
急激に走り出さねばならぬ時代となったから裾の中に、ぬくぬくと収まっていた短い足が急に長く一直線に伸び上がるというに左様に都合よくはまいりません。まずこれだけは暫時、ぽつぽつと進化せねばなりません。
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