婦人と職業
倉田百三
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)男性の矜《ほこ》りある自覚
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から2字上げ](一九三五・三・二)
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今日の社会状態において、婦人を家庭へ閉じこめて、社会の生活戦線における職業に進出することを防ぐことは不可能である。このことはたとい理想的社会が実現されたる暁においても、当為としての法則として、婦人の就職を妨げるいわれはない。婦人も男子と同じく、その天分にしたがって、社会生活の職分を分担すべきである。それによって生活の充実と向上とまた個性の発展とをはかるべきである。実際今日においては職業婦人は有閑婦人よりも、その生命の活々しさと、頭脳の鋭さと、女性美の魅力さえも獲得しつつあるのである。われわれの日常乗るバスの女車掌でさえも有閑婦人の持たない活々した、頭と手足の働きからこなされて出た、弾力と美しさをもっている。働かない婦人はだんだんと頭と心の動きと美しさとにおいて退歩しつつあるように見える。女優や、音楽家や、画家、小説家のような芸術的天分ある婦人や、科学者、女医等の
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