独身婦人の場合は例外である。特殊な天才的才能を恵まれた婦人の場合も例外である。原則としては、理想的社会においては、普通の婦人は、自然が課したる母性としての特別任務をまず果して、それと両立し、少なくとも協定し得る限りにおいて、職業戦線に進出すべきものではあるまいか。
今日の社会では実に婦人は保護されていない。婦人としては男子の圧迫と戦うために職業戦線に出なければならない有様である。婦人の自由の実力を握るための職業進出である。婦人は母性愛と家庭とをある程度まで犠牲としても、自分を保護し、自由を獲得しなければならない事情がある。これは結局は社会改革と男性の矜《ほこ》りある自覚とにまたなければならない問題である。母性愛と職業との矛盾は国家の保護政策を抜きにして解決の道はない。元来子孫の維持と優生という男女協同の任務の遂行が、女子に特別な負荷を要求する以上、男子が女子を保護しなければならないのは当然のことである。しかるに今日においては国法は男子の利益においてきめられ社会は母性と、産児と、未亡人とを保護しない。妊娠すれば職を失わなくてはならぬ有様である。しかも共稼ぎしなくては子どもを養育できない
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