郎内私宛に電報を打って下さい。私は私の妹(艶子でなくて重子というのです)と二人であなたを迎えに駅に行きます。私はあなたの広島に着きなさる日には三次まで出ていたいと存じますから、あなたは、この手紙の着きしだいハガキでよろしいから、およそ何日に広島に着くかを知らせて下さい。私はあなたと三次のバンホフで会う時の光景を想像して心がおどります。私はもはやわざわざ東京から私にあいに来て下さるほど私を愛して下さるあなたに遠慮はいたしますまい。私の部屋のスナッグでないことも、また町の周囲のあらあらしさも。
 私はただあなたと相見る悦ばしさに溺れさしていただきましょう。私は先日、夕飯後いつもする妹との散歩の時に、あるいはこのような景色はかえってあなたに珍しく興味をひくかもしれないなどと語り合いました。昨年の夏のような静かな池の辺りにいないのは残念ですけれど、それもかえって私のファミリエのなかにあなたを包んだほうがあなたのような方にはよいかもしれないと存じます。私は妹と、あなたが来て下すったら、町はずれの森のなかの沼のほとりやまた一、二里はなれた山のなかの牧場などに一緒に行こうなどと楽しく相談いたしました
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