る気もいたします。なにとぞ私に多くを期待せずに愛して下さいまし。私ぐらい生活を乱しがちな弱い者はありますまい。手紙でもあなたたちはいつでも忙しい身でもじきに返事を下さるのに、私はいつも遊んでいながら、このように御無沙汰をいたします。これと申しますのも私の生活がじきに乱れて心がおちつくことが少ないからです。なにとぞ気を悪しくして下さいますな。
信仰の問題についても私は一つの困難に遭遇《そうぐう》いたしました。それは私が聖書をドラマとせずに約束の書として読み、宗教的気分ではなく宗教の信仰をレアルなものとしては満足できなくなったときに生じたのでした。すなわち、聖書のなかにさまざまの疑いを、それは奇蹟に対する疑いよりも、神としての言行の道徳性に対する懐疑が生じました。そして私は宗教が真に「実」なるものとして私のなかに据わるまでには、まだ問題が多く残されてあることを感じだしました。そのようなわけで私は病院にいたときのように平和でいることができません。けれど私はそれらの混乱にも悩みにも耐え忍んで参りますから心配しないでください。
私はこの月の末には別府を去ります。そしてあるいは妹と別れて私だけ
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