られて同情いたします。人生はどこへ行ってもイヴィルがまとわっていますね。私が今日別れた人々のなかにはもはや二度とは会えそうにない人々もかなりあります。ともかく私は別れて帰らなくてはなりません。あなたの「母たちと子たち」についての私の感想は、帰国後書き送ります。今は心せわしくてその暇を持ちませんから。
秋からは東京に行かれるようにする気でいます。妹の写真はとる暇がありませんから、前のを焼き増して送るようにして置きました。では今日はこれで失礼。「母たちと子たち」の原稿のいたんでいるのは、中外日報社から来た時にそうだったのですから、そのおつもりであしからず思召して下さい。[#地から2字上げ](二十二日。京都より)
死にゆく姉
無事御帰省なされ日々|障《さわ》りなくお暮らしなされます由、安堵いたします。なにとぞ私の家を訪れたような不祥があなたの家庭に起こらぬように祈ります。私は京都を出立してよりさまざまな不幸にあいました。尾道に夜遅く着くと思いもよらぬ姉の重患にてちょうど担架にのせられて出養生《でようじょう》するところでした。私はこの姉の病気のことは全く知らなかったので驚きました
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