る姉が、先月二十三日に分娩して以来産後の日だちが悪しく、かねて肺が悪かったので衰弱はなはだしく一昨日突然父より電報が来てお絹さんは急に庄原に帰りました。看護になれているお絹さんに姉を世話してもらうために。父の手紙によればとうてい回復の見込みなしとのことです。私たちも近日のうちに庄原に帰るようになるかもしれません。今は形勢を見て待っています。艶子はなれない炊事をして私を養っていてくれます。庄原から凶報が来はしまいかと不安でなりません。私は今はひたすらに姉の本復を祈っています。私はどのようなことが起こっても耐え忍びます。もし姉が亡くなれば、私の一身上にも大きな変化が来ることは免れません。しかし今はそのようなことをおもんぱかるときではなく一心に姉の本復を祈っています。
艶子はいつ出発せねばならぬかもしれないのでおちつかず、また炊事になれないので心せわしく手紙をかかないからあなたにくれぐれもよろしくとのことでした。
あなたの御家庭にもどうぞこのうえの凶事が訪れませんように。南無阿弥陀仏。
[#地から2字上げ](久保正夫氏宛 五月十三日。京都鹿ヶ谷より)
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