しずつ味識し身読してゆかせてもらいたいものです。お絹さんのことが解決すればまた便りをいたします。一燈園の様子もだんだんとお知らせいたします。そのような事情で当分あなたにもお目にかかれません。どうぞ大切になさいませ。
神様の恵みのゆたかにあなたを包むようにお祈りいたします。
私はこの頃は何だか悲しい変な心地がして私の力でなく、何らかの力――運命に引きずられて生きてるような心地がいたします。おちつきますまで謙さんに手紙がしみじみと書かれませんので、なにとぞこの手紙の旨を謙さんにお伝え下さいませ。
今日はこれで筆をおきます。[#地から2字上げ](久保正夫氏宛 十二月四日。一燈園より)
聖者の子
御親切なお手紙をありがとうございました。お父さんはもはやお帰国なさいましたか、叔父さんが病篤き由さぞ御心配のこととお察し申します。何やかやであなたの心も不安でおちつかないでしょうね。しかしあなたは怒号せず叫泣せざる静かな悲苦と調和との心をもってそれらの思いのままにならぬ周囲に対して平和を保つように努めていられることと思っておいとしく尊く存じます。なにとぞ静かに大きくふくらむように成長
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