はピープルとともに神を拝したき要求があります。そしてそのためにさまざまなおもしろからぬ、教会内の出来事を忍んでいます。そして今周囲から迫害されている教会を助けて働く気でいます。そして間違っているところは神様に恕しを求めます。どうせ間違いはないわけにはいかないのですから、私は許さるべきこととして教会に参ります。信仰はたしかでなくても、私はいのりたく、神をほめたく、キリストの生涯について人々に語ることは悪いことでもあるまいと思われますから。
私は聖書がまだ全く信じられないのは奇蹟や、癒しや、黙示があるためではなく、その計画が私にまだ絶対的完成を疑わしめるような、部分を含んでいるためです。ヨハネが「われその栄を見るにまことに神の子にして……」といったように、その計画がまことに神の計画として私に受け取れるならば、私は証拠を要求する気はないのです。けれど旧約聖書のある部分やまたキリスト伝のほうでも、キリストが数千の豕《いのこ》の群れを鬼に命じて殺すところなどは私は神の栄とは思われません。聖書のなかに示さるる善の理想が神の栄えを現わしていないときに私は信じられません。私はやはり梁川のような仕方で神に会わねばならぬのかもしれません。エーステチッシュに信仰にはいったのでは力と熱とを実有することはできず、スペクラチフな仕方では信ずる意志と感情とを動かすことはかたく、私はそこにある一種の不思議な摂理、天来の恵みと選み、というようなものを待ち望みたくなります。パウロのダマスコ途上の経験や、フランシスのきいた神の声や梁川の見神の実験のような宗教的意識の体験、それは官覚的ではないけれど、官覚よりも鮮明直接な一種の霊的経験を求めたくなります。いかにすればかかる経験が得られるか、梁川などはただ思慕の情の熱して機の熟したときであるといってるだけです。
私は宗教的意識を一生躬をもって研究したいと思います。
性の問題については、私はどうしても肉体の交わりをよしと見ることができません。性欲はエゴイスチックな動機からしか起こらないと私は信じています。(これは私の経験より得た信念です。もし愛の動機からその表現として行なわるる肉体の交わりがあるものならば、私は実に喜びます。私の一つの大きな十字架が取り去られます)
このことについては顔を赤らめずに語られません。私の信念を証するために具体的なことを書けば、あなたは赤面なさいます。なにとぞ許して下さい。思うに謙さんは純潔なのでしょう。それでわからないのでしょう、肉の交わりはたしかに醜な、エゴイスチックなものです、ひとりの少女に対して、もし性欲が起これば、その時の心のなかには愛はありません。異なった動機があります。その動機は天より来るものでなく、地獄にいたるような性質のものです。男と女とは性欲においては互いに食い合う獣のような相にあります。私は恥ずかしくてその証をすることができません。このことはだんだん詳しく申し上げますつもりですが、私は性欲のない、性のねがいというものを心に描きます。肉の交わりのない、しかも性のねがいの飽和する男女の恋、それにはエゴイスチッシュな動機の少しも交わらぬ恋を求めます。それは楽園を失う私たちにはたとえ許されなくとも、私はかかる恋を求めます。もしエゴイズムが悪しきならば肉の交わりは悪しきものです。たとえそれが子供の生まれる唯一の道であるにしても、肉の交わりをする時の男の心はエゴイスチッシュであることは私は今は疑いません。肉交の恐るべきは、その時男女は互いに犯しながら、愛を行のうたと自ら欺くところにあります。私たちが他の生物を食わなくては生きられなくとも、それを食うことはよいことではないように、やむをえぬ保存の道であっても肉交は悪しきものです。私は肉の交わりについてはそのように信じています。そして生物が互いに食うことが神の罰のように肉交しなくてはならないのは、人間に与えられたる罰ではないか。アダムとイヴとは楽園ではそのようなことはしなかったか、してもエゴイスチッシュな動機からでなくてできたのであろうと思います。トルストイが「夫婦はできうる限り肉交を避けよ」といったのは性交のエゴイズムに触れてそれを恐れたからと思われます。私は肉交を愛の表現と誤解した私の過ちを、多くの青年が共にするのを実に残念に存じます。
けれど私は性の欲求を性欲のほかに認めてそれを肯定したいのです。私はそのような天使の恋というべき恋を憧憬いたします。それはインノセントな男女よりもひとたび性欲に落ちて、それを厭離したる男女が神に祈りつつ相愛し、貞潔を守り、もし性欲に落つれば神に潔めを求めつつ共生することによって実現できますまいか。たとえ貞潔を完全に守れなくても、それをシュルドとして神に赦しを求め、実際に貞潔を理想として努力するな
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