芸術上の心得
倉田百三

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)撓《たわ》まず

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一、堅く堅く志を立てること。
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およそ一芸に秀で一能に達するには、何事によらず容易なことではできない。それこそ薪に臥し胆を嘗めるほどの苦心がいるものと覚悟せねばならない。昔から名人の域に達した人が、どれほど苦しんだかということは歴史に伝わっている。芸術は百芸の長である。故にその芸術を一生の仕事としようとする者は、初めに堅く志を立てて如何なる困難に出会っても撓《たわ》まず、その奥義を極めるまでは死すとも止めないほどの覚悟をしなくてはならない。
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一、身体を大切にせねばならない。
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仕事には非常の根気とエネルギーが要る。身体が丈夫ならば丈夫なだけいい。(病身でもそれに打ち克って私の如くやることができるが、丈夫だったらどんなにいいだろうかと思う)芸術上の仕事には種々な経験が豊かなほどいいのだが、身体が弱ければ生活が狭くなる。少な
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