生活に達しようとして努力する生活をいうのである。
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一、よく自然と人生を観察すること。
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芸術は結局人生の相に対する愛[#「人生の相に対する愛」に傍点]から生まれる。よく気をつけて人生を観ることが一番である。そうすればちょっとした出来事にも深い運命や悲哀やまた美の調和や不調和やつまり人生に対する愛と悲しみの意識がだんだんこまやかになるものである。この心持はすなわち良い作の生まれる原動力になる。
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一、よく読書すること。
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われわれの尊い先人の作をできるだけ熱心に読まねばならぬ。これを怠っては芸術の成長の一つの大きな滋養を失うことになる。いい人のものはたくさん読むだけ良い。しかし読書は考えたり観察したりすることほど大切ではない。良く考え良く観察し、良く読むことが揃わねばならぬ。
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一、できるだけ多く書くこと。
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これは芸術に志す者の第一の本業である故に、絶え間なく書かねばならぬ。芸術は一つの技術である。技術は何によらず練習するより他に上達する道はない。一つ書くごとに成長してゆくものである。ロダンなどは絶え間なく練習していたということである。
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 以上を常に忘れず心に止め、固く守って気長く根気強く努力したならば、素質のいい者はきっとすぐれた芸術家になれる。(もし運命がそれを許すならば)



底本:「青春をいかに生きるか」角川文庫、角川書店
   1953(昭和28)年9月30日初版発行
   1967(昭和42)年6月30日43版発行
   1981(昭和56)年7月30日改版25版発行
入力:ゆうき
校正:noriko saito
2005年1月6日作成
青空文庫作成ファイル:
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