学生と読書
――いかに書を読むべきか――
倉田百三
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)敬虔《けいけん》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)欧化|趨勢《すうせい》の
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから2字下げ]
[#(…)]:訓点送り仮名
(例)普覚大師[#(ノ)]書
−−
一 書とは何か
書物は他人の労作であり、贈り物である。他人の精神生活の、あるいは物的の研究の報告である。高くは聖書のように、自分の体験した人間のたましいの深部をあまねく人類に宣伝的に感染させようとしたものから、哲学的の思索、科学的の研究、芸文的の制作、厚生実地上の試験から、近くは旅行記や、現地報告の類にいたるまで、ことごとく他人の心身の労作にならぬものはない。そしてそのような他人の労作の背後には人間共存の意識が横たわっているのであり、著者たちはその共生の意識から書を共存者へと贈ったものである。
したがって、書を読むとはかような共存感からの他人の贈る物を受けることを意味する。
人間共存のシンパシィと、先人の
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