は恋愛以上である。宗教的良心的命令も恋愛以上である。人類的正義と国家的義務も恋愛以上である。青年はこれらの恋愛を越えたる高所を持ちつつ、恋愛を追わねばならぬ。
 さきに善への願いと恋愛の求めとをひとつに燃やしめよといったのもここに帰するのだ。恋以上のもののためには恋をも供えものとすることを互いに誓うことは恋をさらに高めることである。
 肉体的耽溺を二人して避けるというようなことも、このより高きものによって慎しみ深くあろうとする努力である。道徳的、霊魂的向上はこうして恋愛のテーマとなってくる。二人が共同の使命を持ち、それを神聖視しつつ、二人の恋愛をこれにあざない合わせていくというようなことであれば、これは最も望ましい場合である。

     七 私の経験と、若干の現実的示唆

 以上は青年学生としての恋愛一般の掟の如きものである。しかし現実の恋愛は実に多様な場合があり、陥りやすき人間の弱点があり、社会的不備から生ずる同情すべき散文的側面があり、必ずしも一概にはいえないさまざまの事情があるものである。
 ことに私の上来のいましめはイデアリストに現実的心得を説くよりも、むしろリアリストに理想
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