学生と教養
――教養と倫理学――
倉田百三
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)至完善《フォルコンメンデスゲート》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)いわゆる|実質的価値の倫理学《マテリィアーレウェルトエティク》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)倫理的な問い[#「問い」に傍点]
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一 倫理的な問いの先行
何が真であるかいつわりであるかの意識、何が美しいか、醜いかの感覚の鈍感な者があったら誰しも低級な人間と評するだろう。何が善いか、悪いか、正不正の感覚と興味との稀薄なことが人間として低卑であることはそれにもまして恥じねばならぬことである。人の道、天の理、心の自律――近くは人間学的倫理学の強調するような「世の中の道」にまでひろがるところの一般の倫理的なるものへの関心と心得とはカルチュアの中心題目といわねばならぬ。人生の事象をよろず善悪のひろがりから眺める態度、これこそ人格という語をかたちづくる中核的意味でなければならぬ。私はいかなる卓越した才能あり、功業をとげたる人物であっても、彼がもしこの態度
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