B氏は『宗教的意識』のなかにシュライエルマッヘルを引いて、宗教の認識論的研究の必要を説いているが、まことに氏の宗教は認識論をもって終始している。認識論より宗教に入る者の帰着点はどうしても Pantheism のほかにはないように思われる。ことに氏のごとき体系の哲学においては汎神論はほとんど論理的必然であるといってもいい。宇宙は唯一実在の唯一活動である。その活動の根底には歴々として動かすべからざる統一がある。宇宙と自己とは二種の実在ではない。純粋経験の状態においてはただちに合して一となる。すなわち宇宙の統一力はわれらの内部にあっては意識の背後に潜む統一力である。この統一力こそ神である。われらがいかにしてこの神を認識し能うかについてはすでに氏の認識論を考察するときにこれを述べたから、ここでは主として神の本質について考えてみよう。
 第一に神は内在的である。すなわち神はこの世界の外に超越して、外より世界を動かす絶対者ではなく、世界の根底に内存して、内より世界を支え世界を動かす力である。氏の哲学においては現象界の外に世界はない。たとい世界の外に超然として存在する神ありとするも、それはわれらにな
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