驍烽フは抽象的概念であつて、二者合一して初めて完全な具体的実在となるのである。(善の研究――四の三)
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しからばこの唯一の実在なる、現実なる絶対者よりいかにして主観と客観との対立は生ずるであろうか。
氏はこの疑問に答えて、絶対者の中に含まるる内容が内面的必然に分化発展するというのである。けだしこの説明は氏の根本の立場から見て論理的必然の結果であろう。氏は第一事実としてこの唯一実在のほか何ものをも仮定しないのであるから、もし現象の説明としてなんらかの意味において動的の要素をこれに与えなければならないならば働くものと、働きかけらるるものとの対立は一者のなかに統一されなければならない。すなわち唯一実在の自発自展でなければならない。しこうして分化発展の結果として生ずる新しき性質は可能性の形において絶対者の中に初めより含まれていなければならない。哲学は現象の複雑相を説明する統一原理を求むる学である。一と多との問題はその枢軸である。いま氏は実在として唯一絶対者を立した。この絶対者は一にして同時に多でなければならない。このことたるいかにして可能であるか。一にして同時に多
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