《がっしょう》し焼香したい敬虔《けいけん》な心持ちでいる。そして自分が青春を終わるまでに自分が触れ合ってきた、自分を育てるに役立ってくれた――多少とも自分が傷つけているところの――人々に謝しその幸福を祈らないではいられない気がする。自分の青春はまたじつに多くの過失に富んでいたのである。自分は自分に後れて来たる青年が、自分のごとく真摯《しんし》に、純熱に、勇敢に、若々しく、しかしながら自分のごとく過失をつくることなく、したがって自分および他人の運命を傷つけることなく、賢明にその青春を過ごさんことを心から祈らないではいられない。それらの過失はじつに純なる「若さ」に伴うものではあるが、しかしそれは一生の運命の決定的契機をつくるほど重大なるものであり、その過失の結果はじつに永くして怖ろしいからである。現に自分はその過失の報いから今なお癒やさるることを得ずして、不幸な境遇の中に生きている。ただ自分はその境遇の中に祝福を見いだす道の暗示を――それは自分の青春そのものが示唆したのであるが――かすかながらも掴《つか》み得ているために、今後の生活の希望を保つことができるのである。自分はそこに自分の過失を
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