だそのドアを敲《たた》くことをあえてしなかったため、そうした場合には深い深い交わりができたであろう人と、永久に無縁で終わることもある。そこらの微妙な不思議なキッカケ[#「キッカケ」に傍点]を思うと恐ろしい気さえする。自分の尊敬しているある人は六万行願といって、自分が生きている間に一万戸と結縁することを願としている人がある。自分も心の底からでき得るかぎり、多くの人々と結縁することを願うものである。自分は必ずしも自分が結縁したことによって相手を救済することはもちろんその運命をより直くすることができると思うのではない。しかしながら事実としては自分からでも、なお何物かを与えられることのできる人もあるであろうと思うこともまた禁ずることもできない。ただいたずらに謙遜して、ひたすら過ちなきことをのみ期するのが愛の道ではない。自分より、より小さき、より弱き、後れて来たれる者から助けを求められたときには、ある場合にはあえて師長としての助言と保護とを与えることが愛に適う場合もあり得るのである。その意味において自分は本当に実のある、親切な隣人でありたく願うのである。それらのことをいろいろ考え回すときに自分は
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