のはそのためである。ただあの作のモチーフがその点にないというまでのことである。この点についてくれぐれも観客の躓きとならないことを祈る。なおあの芝居を観てくださる人は是非あの本を読んできてくださることをお願いしたい。でないと種々の点において誤解があろうと思われるから。最後にこのたびの上演について尽力してくださった人々に深く感謝する。
[#地から2字上げ](一九一九・一一・一八於一燈園)
[#改ページ]
千手観音の画像を見て
自分はこの間、千手観音の画像を見た。そしてある深い感じに打たれた。自分が常々、こちらに引越してからはことに迫って感じている、この「地の約束」「人身《にんしん》の分限」というものについての感慨をいまさらのごとく、新しく感じさせられた。自分は大森に来てからいろいろと考え抜いたあげく、玄関の入口の壁に次のごとく書いた貼り紙をした。「医師の注意により、面談は水曜日と仮りに[#「仮りに」に傍点]決めさせて戴きます。ただし切迫した心持ちの方にはいつにてもお目にかかります」。自分はこの貼り紙を自分で書いてピンで貼ったが、そのときじつに淋しい気がした。三年前に自分は「文壇への
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