。自分のつくった悪が赦されるために」というにある。文壇には私の非難の全然当たらない人々もあろう。しかし私は信じている。それらの人々は自分で文壇を非難したく思ってるような人々だろう。そして私の言説にあまり気を悪くはしまいと。まだ書き足りないが、後日に譲る。私のこの一文には深い感情と動機がある。これを幼稚だと無下《むげ》に斥くる人は、浅い心の持主である。書き終わって、荒々しい書き方をしたような気がして、何だか心が静かでない。
[#地から2字上げ](一九一八・二・一)
[#改ページ]

 人と人との従属

 現代は、人間が自己の生活に対して、最も意識的になった時代である。人がおのれの幸福についておもんぱかるに熱心なることは今の時代ほど著しいときはあるまい。人はこの地上を楽しく豊かならしめ、おのれの生活を快適ならしむるためには、種々の配慮を惜しまぬように見える。しこうしてその目的は遂げられたであろうか。この世は楽しく住み心地よくなったであろうか。ある者は互いに憎みあっている。ある者は互いに剣を抜いている。ある者は他より奪わんとし、ある者は求むる者にも拒んでいる。ある者は自己を固く塞《とざ》して
前へ 次へ
全394ページ中360ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
倉田 百三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング