で生きるのも、そのままではけっして正しいかどうかまだ決まっていない。これからわれわれが祈って、考えて決めなければならない、未定問題であるということだけ注意したい。
一、モデル問題もまだけっして決まってはいない。自分に寛であってモデルの欠点にのみ鋭いのがいけないのはいうまでもない。しかしモデルの欠点を如実に書いても、そのままで正しいか、どうか。自分の友が窃盗をしたからといって、窃盗をしたといって公衆にふれて歩くのは正しいか。モデルにされた人の心が傷つき、周囲の平和が乱れても事実ならば書いてもいいか。芸術はかかることを超越し得るのか。私は芸術と道徳との間に種々の矛盾を感じざるを得ない。私は文壇がかかる問題を十分に関心することを希望する。
一、ストライキングなことを平気で書くのはいけない。もしある作家が二人の人間を殺せばすむところで、三人の人間を殺させるならば、その作家は一人の人間を気まぐれであるいは不注意で殺したのにも似た罪である。殺人や強姦やすべて人の心をドキドキさせることは、最小限度で書くことを用意すべきである。もししいて書くならば、それを書かざるを得なかった弁解が作品のリズムのな
前へ
次へ
全394ページ中353ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
倉田 百三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング