Bそしてもはやあなたの心の芽の発育に干渉することは避けた方がいいと思うようになりました。神様はあなたの心をどのような仕方で育てたもうご計画かわかりません。もしあなたの心に恋が生じたことが聖旨であるならば、それを私が萎《しぼ》ませようとすることは不謙遜でしょう。人間の純なやさしい心の芽を乾らばしてはなりません。第一私はあなたの髪の毛一すじでも黒くしあるいは白くする力はない。あなたを見ていればあぶなっかしい気はする。けれど私が守ってあげなければあなたが亡びるかのように思うのは私の傲慢でしょう。あなたは神様を信じていつも熱心に祈っていらっしゃる。私はあなたを神様の手に渡すべきです。私は間違っていました。けれど悪く思ってくださいますな。私のしたことは私の知恵の足らないためです。あなたは私にかまわずあなたの感情の発育を自由にのばしていってください。向日葵《ひまわり》が日の光の方に延びて成長してゆくように、神様のめぐみの導きの方へむかってお進みなさい。私はあなたの愛をもみ消そうとはもはやいたしません。それはあなたのものです。そのなかにあなたが尊いいのち[#「いのち」に傍点]を感じなさいますならば、
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