@that the Kingdom of entire gratitude may open within me!
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と貼紙をした。そして夜となればランプをともして好んで中世紀の哲学や旧約聖書やアウグスチヌスやトマス・ア・ケンピスなどを読んだ。ことにトマス・ア・ケンピスの淋しきかつ思いきった隠遁的ムードは自分の心に何よりも慰めと励ましであった。自分は『キリストの追随』や『百合の谷』をどんなに悦《よろこ》んで心に適える思いをもって読んだろう。そこには、
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As oft as I have been among men, I returned home less a man than I was before.
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とも書いてあった。自分は書を読み疲れれば、日当たりのよい縁端で日光浴をし、森の中をさまよい、小山の陰に独り祈り、また暑い午後にはただ一人水の中に浸《つ》かって空行く雲を眺め、水草の花を摘み、水の中に透きとおって見える肌のまわりに集まってくる小さな魚の群れの游《およ》ぐのをじっと眺めているときに、しみじみと孤
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