サんなことを青年が考えるときではない。この命題を前提とするすべての思想を私らは当分|放擲《ほうてき》しなければならない。なんとなれば私らはこれよりもいっそう根本的なる急務を持つからである。すなわち生命に対する態度[#「生命に対する態度」に傍点]を決めねばならぬからである。安らかであろうが、危険であろうが、私らはまず生命という事実に驚異し、疑惑し、この大事実の意味を深く考えてみなければならない。しかる後燃ゆるがごとき熱愛をもって生に執着するもいい。呪うほどの憎悪をもって生を擯斥《ひんせき》するもいい。安らかに生を保つ計を立てるもいい。静かな淵のような目で生を眺め暮らすもいい。あるいは引きずられるように日々を生きてゆくもいい。ただすべての生活は自分のものでなければならない。たとい、自己の生活が社会と歴史とに拡がりゆくにしても、それは自己の生活が社会と歴史とを取りいれたのでなければならない。いかなる場合においても、生命の最高指導者が常識であってはならない。まずいっさいの社会と歴史とより与えられたる価値意識を捨てよ。天と地と数かぎりなき生物の間に自己を置け。しこうして白紙のごとき心をもて生命の
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