ノこれまで幾度も立たれはしなかったろうか。また今のままでゆけば将来も立たれはしまいか。しかもその危険なことをあまり感じないで、この高級なる道徳上の罪を犯されはしないであろうか。で私のあなたにいいたいことを概念的にいい表わすならば、伝道的観念に対する自己内省を深くして欲しいのである。伝道とは自己の思想の普遍と永遠とを要求する心をいうのである。伝道は人心のはなはだ厳粛なる要求である。自己の分を知るものの軽々しくすべきものではない。一山の宗祖たり得るほどの偉大なる人格者のなすべきものである。伝道はじつに個人の内部生活の充実が覚えず知らずあふれ出でて人類を包む尊き現象である。ゆえに伝道せんとするものは、自己の内生命に対する自信と威力とがなければならない。「われかく信ず、ゆえに他人もかく信ぜざるべからず。永久にかく信ぜらるべきものなり」と主張するためには、自己の内生命のよほど充実完成していなければならないのはもとよりのことである。私は伝道の可能を信ずる。個性の多様性を認めながらも、なおそれを超越して、その奥にすべての生物(Lebenswesen)に普遍なるべき宇宙の公道の存在を信ずる。その公道を
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