キればいいであろうか。このとき自分の生活を乱さないように守りながら、黙って自分の道を歩いて行ける人はいい。私にそれができるならば、それほど他人の存在に無関心でいられたならば、私の内部動乱はいかほど少なくて、安易な心を持して行けるかしれないのである。けれどもすでにそれができないとすればどうすればいいか。私には皮肉はいえない。どうしても率直にいうよりほかはない。私はあなたと私とをそういう関係において見いだすものである。だからなにとぞ私があなたの内生活に深く立ち入って手きびしくいうことを許していただきたい。
 Y君、私は自分を Moralist だと信じている。私は固形体の状態から灼熱、鎔解して流動体となり、さらに光を発するほどの精醇な Morality というものに向かって純なる憧憬を持つものである。私はこのモーラリチーというものに対してきわめて広い意識を持つものであって、芸術の根底を支えるものもこの道徳性だと思ってる。このことは幾多の芸術家の反対あるにもかかわらず、私はそう信じているのであって、トルストイなどのいう意味よりも、もっと芸術的な意味で私はいうのである。私はいかなる人であっても
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