との有機的なる融着よ! 大きな鮮やかな宇宙の事実ではないか。その結果として新しき「生」が産出されるのかと思えば、胸がどきどきするほどたのもしい。まことに恋愛は肉の方面から見れば科学者のいうように「原形質の飢渇」であるかもしれない。細胞と細胞とが Sexual union に融合するときの「音楽的なる諧和」であるかもしれない。
 思えば私は長い間淋しい不安な荒んだ生活をしてきたのだ。それはあたかも霖雨のじめじめしい沼のような物懶《ものう》い生活が今日も今日もと続いたのだ。欠席、乱酒、彷徨、怠惰、病気、借金、これらのもののなかを転っていた私の生活はけっして明るいものではなかった。ぼんやりふところ手して迷児《まいご》のように毎日のように郊外をうろついたこともあった。酒精にたるんだ瞳に深夜の星の寒い光をしみこませて、電信柱を抱いて慟哭したこともあった。
 そんな私だもの、恋を放してどうしよう。私はとてもほかのことでは充実できそうにも思われないのだ。私はもうもうあんないやな生活は繰り返したくない。恋がだめなら、私ももうとても駄目だ。私は度胸を据えた。
 私はいま実際充実してる。歓喜にみちてる。
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