の利者《きけもの》の一人なのだ。
そうして僕は青幇会員で、この会員であるがために、生活することが出来ているのだよ。
今日彼女は僕に云ったっけ。――
「妾《わたし》、グレーとエリオットとの二人へ、女装をしたり男装をしたりして、自由に体を任かせたのも、紅幇の頭から命ぜられたのではなく、自分から進んでやったのよ。そうやって二人をだいなし[#「だいなし」に傍点]にして、殺してやろうと思ったからだわ。でもとうとうエリオットの方は、妾から鴉片を進めたのに乗って、鴉片を喫い出したので頭を悪くし、昔のあいつ[#「あいつ」に傍点]じゃアなくなったし、グレーの方はあんな具合に、貴郎《あなた》に殺して貰ったし、妾の目的は遂げられたってものよ。……これじゃアなかなか鎮江は、英軍の手には落ちないわね。……二人の大将が駄目になったんですもの」
「それにしてもどうしてグレーって男が、あんな所へやって来たんだい?」
「妾からやっぱり、呼んだからよ。例の厠の紙を使って。好奇《ものずき》にあいつ[#「あいつ」に傍点]やって来たのさ。毛唐って奴、好色だからねえ……ところが現われた女ってのが、自分だけの情婦だと自惚れてい
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