落とす。そうして自分の部屋へ引き上げて行く。と今度は男の方が、風呂へ入れられて洗われる。それから別の寝室へ送られ、二番目の女を迎えることになる。こういうことが繰り返され、二日でも三日でも五日でも十日でも、男の精力のつづく中は、女達の欲望の消えない中は、無限に繰り返されて行くのだよ。
友よ、そういう加華荘舎へ、僕は招待にあずかったのだ。そうして今云った手順を経て、一つの寝室へ通された。その寝室には寝台があり、寝台には鴉片の装置があり、酒を飲むようにもなっていた。ほのかな燈火《あかり》もともされていた。僕は寝台に横になり、
(来やがれ、淫婦ども?)と思っていた。
とうとう女はやって来た。
外から部屋の錠を外し、内へ入ると錠をかい、平然として近寄って来た。彼女等はすっかり慣れているのだ。男が女を弄ぶことに、すっかり慣れているように、彼女等は男を弄ぶことに、これまたすっかり慣れているのだ。
僕はかづいていた衾《ふすま》の中で、鎧通の柄を握り――殺そうなどとは夢にも思わず、傷付けようなどとも夢にも思わず、せいぜいのところひっこ抜いて、嚇《おど》してやろうと考えていた。と、衾が捲くられた。つまり女が捲くったのだ。で、僕は女の顔を見た。
「あ」と僕は思わず云った。
その女が彼女だったからだ。江陰の郊外でグレーと一緒に、散策していた支那美人――宋思芳と似ている支那美人だったからだ。
僕は鎧通を手から放した。
そうして寝台の一方を開けた。彼女が寄り添って寝られるように。
で彼女は僕の側《そば》へ寝た。
そうして二人は陶酔してしまった。
満足して彼女が立ち去る時、彼女は僕へ囁いた。
「他の女へ貴郎をお渡しするのは、私大変厭なんですけれど、少なくももう一人の女へだけは、貴郎をお貸ししなければならないのです」と。
僕はそれから風呂へ入れられ、別の寝室へ案内された。
扉をあけて中へ入った途端、しかし意外の光景を見た。まぎれもない宋思芳少年が、一人の外人に咽喉を抑えられ、寝台の上へ捻じ仆《たお》され、圧殺されようとしているのだ。
「タ、助けて!」と息も絶え絶えに、その宋思芳が僕へ云った。
で、僕はほとんど夢中で、その外人へ飛びかかり、持っていた鎧通で一えぐりした。外人――それはグレーだったが、もろくもそのまま死んでしまった。
友よ、グレーの血に染まった、醜悪な死骸を
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