元二十三年、太原《たいげん》方面に悠遊した。
 哥舒翰《かじょかん》などと酒を飲んだ。
 また※[#「言+焦」、第3水準1−92−19]郡《しょうぐん》の元参軍《げんさんぐん》などと、美妓を携えて晋祠《しんし》などに遊んだ。
 やがて去って斉魯《せいろ》へ行き、任城《にんじょう》という所へ家を持った。孔巣父《こうそうほ》、裴政《はいせい》、張叔明《ちょうしゅくめい》、陶※[#「さんずい+眄のつくり」、第4水準2−78−28]《とうべん》、韓準《かんじゅん》というような人と、徂徠山《そらいざん》に集って酒を飲み、竹渓の六逸と自称したりした。
 こうして天宝《てんほう》元年となった。
 この時李白四十二歳、詩藻全く熟しきっていた。
 会稽《かいけい》の方へ出かけて行った。
 ※[#「炎+りっとう」、第3水準1−14−64]中《えんちゅう》に呉※[#「竹かんむり/均」、第3水準1−89−63]《ごいん》という道士がいた。
 二人はひどく[#「ひどく」に傍点]ウマが合った。共同生活をやることにした。
 東巖子《とうがんし》に比べると呉※[#「竹かんむり/均」、第3水準1−89−63]の方は、ちょっと俗物の所があった。それだけにその名は喧伝されていた。
 時の皇帝は玄宗であった。
「※[#「炎+りっとう」、第3水準1−14−64]中の呉※[#「竹かんむり/均」、第3水準1−89−63]を見たいものだ」
 こんなことを侍臣に洩らした。
 呉※[#「竹かんむり/均」、第3水準1−89−63]の許へ勅使が立った。
 出て行かなければならなかった。
「おい、お前も一緒に行きな」
「うん、よし来た、一緒に行こう」
 李白は早速行くことにした。
 やがて二人は長安へ着いた。
 長安で賀知章《がちしょう》と懇意になった。
 賀知章は李白を一見すると、驚いたようにこう云った。
「君は人間なのか仙人なのか?」
「どうもね、やはり人間らしい」
「仙人が誤って人間になると、君のような風采になるだろう。君は謫《たく》[#ルビの「たく」は底本では「てき」]せられた仙人だよ」
「まあさ、見てくれ、謫仙人の詩を」
 李白は旧稿を取り出して見せた。
 賀知章はすっかり[#「すっかり」に傍点]参ってしまった。
「素晴らしい物を作りゃアがる。こいつちょっと人間業じゃアねえ。君のような人間に出られると、僕の人気な
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