はり少しも得るところがなかった。
「昔の有名な大盗で鼓を利用したというようなものは、どうも一向聞きませんな」誰の答えもこうであった。
「一人ぐらいはございましょう!」平八が押してたずねても、知らないものは知らないのであった。
「残念ながらこれは駄目だ」平八老人は失望したものの、
「小梅で聞いた鼓の音、何んともいえず美音であったが、いずれ名器に相違あるまい。それを鼓賊が持っているとすると、盗んだものに違いない。よしよしこいつから調べてやろう」
また訪問をやり出した。鼓造り師、囃し方、鼓の名人といわれる人、各流能楽の家元《いえもと》から、音楽ずきの物持ち長者、骨董商《こっとうしょう》というような所を、根気よく万遍《まんべん》なく経《へ》めぐって「鼓をご紛失ではござらぬかな?」こういって尋ねたものである。
しかるに麹町《こうじまち》土手三番町、観世宗家の伯父にあたる、同姓信行の屋敷まで来た時、彼の労は酬いられた。嫡子銀之丞が家に伝わる、少納言の鼓を信州追分で、紛失したというのであった。
「まず有難い」と喜んで、その銀之丞へ面会をもとめ、当時の様子をきこうとした。銀之丞は会いは会ったものの
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