います。父は科学者でございました。どんなことでも出来ましたので。……いよいよお別れでございます」
再びドッと鬨の声! 館へ乱入する足の音! 石壁を破壊する槌《かけや》の音!
「さようならよ! さようならよ!」
叫びながらお艶は手を上げて、石壁の一点へ指を触れた。と、お艶の足の下、一間四方の石床が、音もなくスーと下へ下がった。今日のエレベーター、そういう仕掛けがあったのであった。その時洞然と音を立てて、さすが堅固の石壁も、槌《かけや》に砕かれて飛び散った。ムラムラと込み入る賊の群、それと引き違いに飛び出した造酒、敵と間違えて追い縋る賊を、刀を抜いて切り払い、象ヶ鼻へ走って行った。
ここは絶壁象ヶ鼻、太平洋の荒浪が、岩にぶつかり逆巻いていた。と、ゴーゴーと音がした。蝶つがいで出来た大扉が、あたかも左右にひらくように、今、岩が濤《なみ》を分け、グ――と左右へ口をあけた。と、濛々《もうもう》たる黒煙り。つづいて黒船の大船首。胴が悠々と現われた。一本|煙突《チムニイ》二本マスト、和船洋風取りまぜた、それは山のような巨船であった。船首に篝《かがり》が燃えていた。その横手に一人の武士が、牀几
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