?」「それには訳がございます」気味が悪いというように、小刻みに後へ退りながら、「実はこうなのでございますよ。一旦お返ししたあとで、是非に頂戴いたしたいと、お願いしたのでございますな。すると観世様はこうおっしゃいました。盗まれてみれば不浄の品、もう家宝にすることはできぬ。往来へ捨てるから拾うがよいと。……で往来へお捨てなされたのを、わっちが急いで拾ったので。嘘も偽《いつわ》りもございません。ほんとうのことでございますよ」次郎吉は額の汗を拭いた。
 造酒は迂散《うさん》だというように、黙って話を聞いていたが、不承不承に頷いた。
「貴様も相当の悪党らしい。問い詰められた苦しまぎれに、ちょっと遁《の》がれをいうような、そんなコソコソでもなさそうだ。それに観世の精神なら、そんな態度にも出るかもしれない。お前のいいぶんを信じることにしよう」「へえ、ありがとう存じます。ヤレヤレこれで寿命が延びた、抜き打ちのただ一刀、いまにバッサリやられるかと、どんなにハラハラしたことか。……それはそうと平手様、どうしてこんな辺鄙《へんぴ》な土地に、おいでなさるのでございますな?」……聞かれて造酒は気まずそうに、寂し
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