流儀から外れていた。むりに名付けると秋山流であった。「飛込《とびこみ》一刀」といわれたところの、玄妙な一手を工夫して、ほとんどこればかり用いていた。遠く離れてじっと構え、飛び込んで行ってただ一刀! それだけでカタをつけるのであった。あんまり諸方で敬遠されるので、彼もいいかげん閉口してしまった。そこで博徒を訪問しては、そいつらに武芸を教えることにした。大前田英五郎、国定忠治、小金井小次郎、笹川繁蔵、飯岡助五郎、赤尾林蔵、関八州の博徒手合いで、彼に恩顧を蒙《こうむ》らないものは、一人もないといってもよい。ある時は高級用心棒として、賭場を守ったこともあり、またある時はなぐりこみへ出張り、直々武勇を現わしたこともあった。ただしなぐりこみへ出た時は、剣を用いなかったという事であった。
 さて秋山要介は、そういう人物であったので、取り立てた弟子も多くなかったが、しかし一面関東の侠客は、全部弟子だということが出来た。その間特に可愛がった弟子に金子市之丞という若者があった。下総国|葛飾郡《かつしかごおり》流山在の郷士の伜で、父藤九郎は快男子、赤格子九郎右衛門と義兄弟を結び、密貿易を企てたが、その後ゆえ
前へ 次へ
全324ページ中275ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
国枝 史郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング