ない財産を、持ち運ぶためでございますよ」森田屋は居住居を正したが、「実はこうなのでございます。十数年前大坂表で、赤格子九郎右衛門一味の者が、刑死されたと聞いたとき、そこはいわゆる蛇《じゃ》の道は蛇《へび》で、眉唾《まゆつば》ものだと思いました。はたしてそれから探ってみると、刑死どころかお上の手で、丁寧に船で送られて、南洋へ渡ったじゃございませんか。そこでわたしたちは考えたものです。彼奴《きゃつ》が永年密貿易によって、集めた財産は莫大なものだが、どこに隠してあるだろうとね。南洋へ移した形跡はない。ではどうでも日本のうちにある。ソレ探せというところから、随分手を分けてさがしましたが、ねっから目っからないではございませんか。そうこうしているうち年が経ち、ある事情でこのわたしは、海賊の足を洗いました。……」
「ううむ、そうか、それじゃやっぱり、お前は海から足を洗い、素人《しろと》になっていたのだな」
 平八はうなずいて言葉を※[#「插」のつくり縦棒を下に突き抜ける、第4水準2−13−28]んだ。「で、どこに住んでいたな?」「へい、江戸におりました」「ナニ江戸に? 江戸はどこに?」「日本橋は人形
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