它」、第3水準1−14−88]する、武士の声が響いて来た。と、つづいてウワーッという、海賊どもの喚き声が聞こえ、忽ち田面《たのも》の蝗《いなご》のように、胴の間口から七、八人の、海賊どもが飛び出して来た。と、その後ろから現われたのが、怒気を含んだ例の武士で、両手に握った太い丸太を、ピューッピューッと振り廻した。が、振り方にも呼吸があり、決してむやみに振り廻すのではない。急所急所で横に縦に、あるいは斜めに振り下ろすのであった。
しかし一方賊どもも、命知らずの荒男《あらおとこ》どもで、危険には不断に慣れていた。ことには甲板には二十人あまりの、味方の勢がいたことではあり、一団となって三十人、だんびら[#「だんびら」に傍点]をかざし槍をしごき、ある者は威嚇用の大まさかりを、真《ま》っ向《こう》上段に振りかぶり、さらにある者は破壊用の、巨大な槌を斜めに構え、「たかが三ピンただ一人、こいつさえ退治たらこっちのもの、ヤレヤレヤレ! ワッワッワッ」と、四方八方から襲いかかった。
が、武士の精妙の剣技たるや、ほとんど類を絶したもので、人間業とは見えなかった。まず帆柱を背に取ったのは、後ろを襲われない
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