って即座にいった。己が姿を船大工にやつし、敵地へ乗り込もうというのであるから、忙しいうちにも平八は、一通り船のことは調べて置いた。
「それならここだ、ここは何というな?」「へい、赤間梁《あわち》と申しやす」「うん、よろしい、ではここは?」「三|間梁《のま》でございますよ」「感心感心よく知っている。ではここは? さあいえさあいえ」「下閂《したかんぬき》でございまさあ」「ほほう、いよいよ感心だな。ここはなんという? え、ここは?」
「なんでもないこと、小間《こま》の牛で」「いかにもそうだ、さあここは?」「へい、横山梁《よこやま》にございます」「うん、そうだ、さあここは?」「ヘッヘッヘッヘッ、蹴転《けころ》でさあ」「ではここは? さあわかるまい?」「胴《どいがえ》じゃございませんか。それからこいつが轆轤座《ろくろざ》、切梁《きりはり》、ええと、こいつが甲板の丑《しん》、こいつが雇《やとい》でこいつが床梁《とこ》、それからこいつが笠木《かさぎ》、結び、以上は横材でございます」
ポンポンポンといい上げてしまった。
「ふうむ、感心、よく知っている。さては多少しらべて来たな。……よし今度は細工で行
前へ
次へ
全324ページ中253ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
国枝 史郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング