くな、え、銚子へ?」
「へい、いえちょっと、仕事の方で。……それはそうとお武家様も、やはり銚子でございますかな?」
「いやおれはすこし違う」武士は変に笑ったが、「ところでお前は何商売だな?」
「へい、船大工でございます」こうはいったが平八は、気味が悪くてならなかった。
「なに船大工? 嘘をいえ」武士はいよいよ変に笑い、「これ、大工というものはな、物を見るのに上から見る。ところがお前は下から見上げる。アッハハハ、これだけでも異《ちが》う。どうだ、これでも大工というか?」
これを聞くと平八は「あっ、しまった」と胸の中でいった。武士の言葉に嘘はない。すべて大工というものは、棟《むね》の出来栄《できばえ》へまず眼をつけ、それからずっと柱づたいに、土台の仕組みまで見下ろすものであり、それが万事に習慣づけられ、人を見る時には頭から眺め、足に及ぼすものなのであった。これに反して与力、同心、岡っ引きなどというようなものは、何より先に足もとを見、その運びに狂いがないかを、吟味するのに慣らされていた。しかるに平八は思うところあって棟梁《とうりょう》風にやつしてはいたが、ついうっかりとその点へまで、心を配
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