いうのはその師匠が、千葉周作だからであった。
千葉道場へ入門してから、すでに三月経っていた。
初め敵討ちの希望をもって、千葉道場を訪《おと》ずれて、武術修行を懇願するや、周作はすぐに承知した。
「どうやら話の様子によると、富士甚内というその人間、武術鍛練の豪の者のようだ。ところでお前はどうかというに、以前は馬方今は水夫《かこ》、太刀抜く術《すべ》も知らないという。ちとこれは剣呑《けんのん》だな。なかなか武術というものは、二年三年習ったところで、そう名人になれるものではない。しかるに一方敵とは、いつなん時出逢うかもしれぬ。今のお前の有様では返り討ちは必定だ。……そこでお前に訊くことがある。どうだ、喧嘩などしたことがあろうな?」
「へえ」といったが甚内は、びっくりせざるを得なかった。「喧嘩なら今でも致しますので。馬方船頭お乳《ち》の人と、がさつな物の例にある、その馬方なり船頭なりが、私の稼業でございますので。」
「そこで喧嘩は強いかな?」
「へえ」といったが甚内は、いよいよ変な顔をした。「強いつもりでございます」
「得手は何んだな? 喧嘩の得手は?」「へえ、得手とおっしゃいますと?」「
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