の手で死にたいか」
浪人は鼻でセセラ笑ったが、「そうさ、いずれはそうなろうよ」縋られた手を振り払い、「俺は行くのだ。行かなければならない。鼓賊が俺をそそのかしてくれた。鼓賊が俺を勇気づけてくれた」
「悪行《あくぎょう》はおやめくださいまし」
「どうしてきょうの日を食って行く」
「ハイ、この上は、この妾が……」
女房は袂《たもと》で顔を蔽うた。
「うん、やるつもりか! 美人局《つつもたせ》!」
「ハイ、夜鷹《よたか》でも、惣嫁《そうか》でも」
「そんなことではまだるッこいわい!」
ポンと足で蹴返すと、浪人はツト外へ出た。
……開けられた門口《かどぐち》から舞い込んだのは、風に捲かれた粉雪であった。
女房は門の戸を閉じようともしない。
遠くで追分が聞こえていた。
今の雪風に煽られたのか、炉の埋《うず》み火が燃え上がった。
サラサラと落ちる雪の音。……
「身を苦しめるが罪障消滅。……もうあの人は帰って来まい。……ああまた追分が聞こえて来る」
耳を澄まし眼を据えた。
木立ちに風があたっていた。
どこぞに遠火事でもあると見えて、ひとつばんが鳴っていた。カーンと一つ聞こえて来
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