う。つまりなんだ、その鼓賊と、あるやくざな与力あがりとが、競争するのでございますな。ところでいつも与力あがりの方が、カスばかり食わされるのでございますよ。それがまた途方もなく面白いので」「なるほど、そいつは面白そうだな」
 こうはいったが平八は、苦く笑わざるを得なかった。

    名人地獄! 名人地獄!

「ふん、それからどうしたな?」平八は先をうながした。
「……で、おおかた筋といえば、そういったものでございますがね、どうもつくりがあくどいので。へへへへ、全くあくどいや」「なんだい、いったいつくりとは?」「へい役者のつくりなので」
「役者のつくりがどうしたんだ?」「こればっかりは申されません。旦那ご自分でごらんなすって」
 小松屋松五郎はこういうと、何かひどく気の毒そうに、クックックッと含み笑いをした。
「で、座頭《ざがしら》は何んというんだ?」
「阪東米八といいますので」
「そいつが切り髪の女なのか?」「へい、さようでございます。滅法《めっぽう》仇《あだ》っぽい美《い》い女で、阪東しゅうかの弟子だそうです」
「鬘《かつら》を着けていたひにゃア、切り髪なんかわかるまいに、どうしてお
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