「それは不思議でございますな」これは碩翁にも意外であった。
「もっとも訴訟の面《おもて》では、処刑されたことになっている」
「では、事実は異いますので」
「きゃつ[#「きゃつ」に傍点]は今でも生きている筈だ」
「とんと合点がいきませんな」
「というのは外でもない。命乞いをした人間がある」
「しかし、さような大海賊を。……」いよいよ碩翁には意外であった。
「いや、さような海賊なればこそ、命乞いをしたのだよ」
「とんと合点がいきませんな」
「とまれきゃつ[#「きゃつ」に傍点]は生きている筈だ」

    文庫から出した秘密状

「恐ろしいことでございますな」
「ただし南洋にいる筈だ。いや、いなければならない筈だ」
「ははあ、南洋にでございますか」
「国内に置いては危険だからな」
「申すまでもございません」
「しかるにきゃつめ、最近に至って、日本へ帰って来たらしい」
「どうしてお解りでございますな」
「赤い格子に黒い船……こういう唄がはやっているからよ。……それにこの頃犬吠付近で、よく荷船が襲われるそうだ」
「それは事実でございます」
「だから、俺は、そう睨んだのさ」
「こまったことでござい
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