上げる。師弟の誼《よし》みももうこれまで、千葉道場はもちろん破門、立ち廻らば用捨《ようしゃ》せぬぞ」
そのままシトシトと行き過ぎてしまった。実に堂々たる態度であった。二人の武士は一言もなく、そのあとを見送るばかりであった。
と、一人が吐息《といき》をした。「オイ観世、ひどい目にあったな?」
「大先生とは知らなかった。平手、これからどうするな?」
「うむ」といって思案したが、「いい機会だ、旅へ出よう。そうして一修行することにしよう」
「武者修行か、それもいいな。ではおれもそういうことにしよう。但しおれは剣はやめだ。おれはおれの本職へ帰る。能役者としての本職へな」
意外、意外、また意外!
さて一方老武士は、ポンポンと鳴る鼓を追って、ドンドンそっちへ走って行ったが、松平出雲守の邸前まで来ると、音の有所《ありか》が解らなくなった。はてなと思って耳を澄ますと、やっぱり鼓は鳴っていた。どうやら西の方で鳴っているらしい。でそっちへ走って行った。そこに立派な屋敷があった。松平備後守の屋敷であった。しかしそこまで行った時には、もう音は聞こえない。しかしそれより南の方角で、幽《かす》かに
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