舎者の挨拶であった。
「おお空腹か、そうであろう、誰か湯漬《ゆづ》けを持って来い。……さてその間にきく事がある。もう本名を明かせてもよかろう」

    剣《つるぎ》の神様でございます

「へい、もうこうなりゃ仕方がない、何んでも申し上げてしまいますよ」「産まれはどこだ? これから聞きたい」「へい、上州でございます」「うん、そうして上州はどこだ?」「佐位郡《さいごおり》国定村《くにさだむら》で」
 すると周作は頷《うなず》いたが、「ではお前は忠次であろう?」
「へい、図星でございます。国定忠次でございます」
 これを聞くと道場一杯、押し並んでいた門弟の口から、「ハーッ」というような声が洩れた。これは驚いた声でもあり、感動をした声でもあった。当時国定忠次といえば、関東切っての大侠客、その名は全国に鳴り渡っていて、「国定忠次は鬼より怖い、ニッコリ笑えば人を斬る」と唄にまで唄われていたものである。その忠次だというのであるから、ハーッと驚くのももっともであろう。
「おお、そうか、忠次であったか、わしもおおかたその辺であろうと、実は眼星をつけていたが、いよいよそうだと明かされて見ると、妙に懐かし
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