を止め声のした方をきっと見ると、ひと群《むら》茂った林の中から裸体《はだか》の壮漢が飛び出して来た。信濃《しなの》の秋は寒いというに腰に毛皮を纏《まと》ったばかり、陽焼けて赤い筋肉を秋天の下に露出させ自然に延ばしたおどろ[#「おどろ」に傍点]の髪を房々と長く肩に垂れ、右手《めて》に握ったは山刀、年はおよそ十七、八、足には革草鞋《かわわらじ》を穿いている。
「射《や》っちゃアいけねえ射っちゃいけねえ! ここで射《や》られてたまるものか。せっかく俺《おい》らが骨を折って八ヶ嶽から追い出して来た熊だ。他人《ひと》に取られてたまるものか……さあ野郎観念しろ! いいかげん手数をかけやがって! 猪太郎様の眼を眩《くら》ませうまうま他領へ逃げようとしたってそうは問屋でおろさねえ!」
詈《ののし》り詈り熊を追い、追い縋《すが》ったと思ったとたんパッと背中へ飛び乗った。
「オーッ」と熊も一生懸命、後脚で立って振り落とそうとする。
「どっこいどっこいそうはいかねえ! これでも喰らって斃《くたば》りゃあがれ!」
キラリ山刀が閃《ひらめ》いたかと思うと月《つき》の輪《わ》の辺から真っ赤な血が滝のように迸《
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