ら口を出した。
「先生には先生のお考えがある。そういつまでもお尋ねするはかえって失礼にあたるではないか」
「はい。失礼致しました」お石はそっと涙を拭きつつましく[#「つつましく」に傍点]後《あと》へ膝を退《の》けた。
部屋の中がひとしきり寂然《しん》となる。
「ちょっとお耳を……」
と云いながら蘭医《らんい》北山《ほくざん》が立ったので続いて弓之進も立ち上がった。二人は隣室へはいって行く。
「あまり奥方がご愁嘆《しゅうたん》ゆえ申し上げ兼ねておりましたが、とても病人は癒《なお》りませんな」
「ははあ、さようでございますかな。定命《じょうみょう》なれば止むを得ぬこと」
「蘭学の方ではこの病気を急性肺炎と申します。今夜があぶのうございますぞ」
「今夜?」とさすがに弓之進も胆《きも》を冷やさざるを得なかった。
「いずれ後刻、再度来診」
こう云って北山の帰った後は火の消えたように寂しくなった。
二人の中の一粒種、十一歳の可愛い盛り、葉之助は大熱に浮かされながら昏々《こんこん》として眠っている。
「もし、ほんとに死にましょうか?」お石はほとんど半狂乱である。
「天野北山は蘭医の大家、診察
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