た窓へ現われた。
「もうないよ。あっちへお行き」
 こう云いながら手を振ると、熊は二、三度|頷《うなず》いたが、スッと窓から消えてしまった。
 そこで山吹は窓を閉じ元の場所へ帰って来た。じっと焚火を見詰めながら、また物思いにふけるのである。
 夜は次第に更けて行った。
 彼女はいつまでも待っていた。身動きさえしないのである。
 その時足音が聞こえて来た。しかし人の足音ではない。シトシトシトシトと小屋の周囲《まわり》をその足音は廻り出した。しかも多勢の足音である。それはどうやら犬らしい。甘えるような泣き声がクーン、クーンと聞こえて来た。
「おや来たんだよ、お爺さん達が」
 呟きながら山吹はまただるそう[#「だるそう」に傍点]に立ち上がると入口の戸を開けてやった。その戸口からはいって来たのは五匹の凄じい狼であった。全身、雪で白かったが鼻面ばかりは赤かった。生血《なまち》に塗《まみ》れているのである。
 権九郎の死骸を食い荒らしたその五匹の狼達であった。
 しかも一匹の狼は肉の着いた骨をくわえていた。それは権九郎の骨なのである。しかしもちろん山吹はそんなことは夢にも知らない。で、彼女はこう云
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