がてすっかり見えなくなった。雪の墓場へ埋められたのだ。
多四郎はヒラリと橇へ乗った。
一言も云わず見返りもせず彼は橇を走らせた。間もなく彼と橇の影とは吹雪に紛《まぎ》れて見えなくなった。森然《しん》と後は静かである。
ウォーとその時森の方から狼《おおかみ》の声が聞こえて来た。それに答えてどこからともなくウォーウォーと狼の声が二声三声聞こえて来た。と、純白の雪の高原へ一点二点、三、四点、黒い形が浮かび出たがだんだんこっちへ近寄って来る。すなわち数匹の狼である。
四方に散っていた狼がさっ[#「さっ」に傍点]と集まって一団となるや、その一団の狼は鼻面を低く地へ垂れて人間の血を恋うようにこっちへノシノシと走って来たが、死骸の埋ずまっている場所まで来るとグルグルグルグル廻り出した。廻りながらパッパッと雪を掻く。掻かれた雪は嵐《あらし》に煽《あお》られ濛々《もうもう》と空へ立ち昇る。その下から現われたのは無慙《むざん》な権九郎の死骸である。颯《さっ》と狼は飛びかかった。
死骸は狼に喰い裂かれ、後へ残ったのは襤褸《ぼろ》ばかりであった。しかしそれさえ雪に蔽われ瞬間《またたくま》に消えて行っ
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